1999年、週刊文春がジャニー氏の性加害に関するキャンペーンを実施し、数人の証言を得て疑惑を報じる。
これに対し、ジャニーズ事務所は名誉棄損で文春を訴えた。
一審:東京地裁
9つの争点のうち5つの争点で文春側が敗訴し、セクハラ行為についても認定されなかった。
文春は計880万円の支払いをするよう命じられる。
- 被害を受けたという少年らの供述は、被害日時について具体的かつ明確に述べていない:真実と認められない
- 文春は加害者とされるジャニー氏や事務所に対して可能な限りの取材をしていなかった:真実相当性が認められない
- 少年らから捜査機関に対する告訴などがされた形跡もなく、捜査機関による捜査が開始された状況もうかがわれない
- 少年らが逆らえばステージ上の立ち位置が悪くなったりデビューできなくなったりするのに乗じてセクハラ行為をしていることに関し、その重要な部分が真実であるとの証明はされてない
一審の判決に対し、双方が不服として控訴。
二審:東京高裁
文春が4つの争点で敗訴。セクハラ行為については、文春記事の主要部分が真実性の要件を満たしていると認定される。
これにより、文春の支払い金額は計120万円に減額。
ジャニーズ側が上告したが棄却され、高裁判決が確定。
- 少年らが捜査機関に申告したり、保護者に事実を打ち明けたりしなかったことについて:社会的ないし精神的に未熟であること、ジャニー氏と少年らの社会的地位や被害内容の性質を踏まえ、不自然ではないと判断された
- ジャニー氏はセクハラ行為について「そういうのは一切ございません」と述べるだけで、具体的な反論・反証を行っていない
これらの理由から、セクハラ行為の真実性が認められた。
また、ジャニー氏が少年たちについて「(彼らが)噓の証言をしたということを、僕は明確には言い難いです」と言ったことも、セクハラ行為の真実性が認められた一因だと考えられる。
ジャニー氏のこの発言を聞いて、文春側の弁護士は「勝った!」と思ったそうだ。
法廷で嘘をつくと偽証罪に問われる。ジャニー氏は少年たちがこの偽証罪に問われることを恐れ、”嘘の証言をしたと明確には言えない”と述べた可能性がある。
刑事事件にはなっていない
文春との裁判はいずれも民事裁判である。
そのため、セクハラ行為の真実性が認められたとはいえ、ジャニー氏に有罪判決が出たわけではない。
この文春との裁判を含め、ジャニー氏の性加害が刑事事件になったことはない。
最高裁には行っていない
先述の通り、二審判決を受けてジャニーズ事務所側が上告したが棄却されている。
そのため、”最高裁まで争われた”などの情報はデマ。
最高裁には行っておらず、高裁判決が確定している。
真実性・真実相当性
真実性・真実相当性とは、民法上の名誉毀損において、示された事実が真実であるか、真実であると信じるについて相当な理由があったかどうかを判断する基準。
- 真実性:客観的に真実であること。真実であれば、たとえそれが他人の名誉を毀損するものであっても、名誉毀損は成立しない。
- 真実相当性:真実ではない場合であっても、真実であると信じるだけの相当な理由があった場合には、名誉毀損は成立しない。
真実性・真実相当性が認められても、それが真実であるとは限らない。
ゆえにジャニーズ事務所と文春の裁判においても、セクハラ行為に関して真実性・真実相当性は認められたが、真実ではない可能性もある。
セクハラ行為がなかったという証拠はないが、あったという証拠もなし。
裁判では被害者とされる人物の証言に真実味があったか、文春がしっかり取材をしていたかなどが要点で、セクハラ行為そのものが調査されたわけではない。
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