2023年8月、再発防止特別チームがジャニー氏の性加害疑惑に関する調査結果を報告。
この記事では、その内容について個人的に感じたことや、特別チームのメンバーについて述べる。
なお再発防止特別チームは、第三者委員会と性質の変わらないものである。
個人的に重要だと思ったポイント
私が個人的に重要だと思った点の抜粋。
- 仮に関係当局が法令上の権限に基づいて調査・検査を行った場合には特別チームの認定とは異なる事実関係が明らかになる可能性がある。
- 被害者のヒアリングからは、少なく見積もっても数百人の被害者がいるという複数の証言が得られた。
- 白波瀬氏は、ジャニー氏が 10 代の少年を対象とした同性愛者であるという噂は聞いたことがあったが、ジャニー氏の性加害を直接見たわけでなく、そうした噂は信じていなかったし、現在でもジャニー氏が性加害を行っていたとは考えていないと当初供述していた。
- (ジャニーズ事務所の関係者で)実際に性加害を目撃したり、被害者から性加害について直接話を聞いたりしたことがあると供述する者はいなかった。
- メリー氏は、ジャニー氏の性加害疑惑に対しては一貫して否認する態度を貫いていた。
- ジャニーズ事務所が再発防止策を適切に実施して再出発を図る最初の一歩としては、ジャニーズ事務所が組織としてジャニー氏の性加害が事実であることを認め、真摯に謝罪をすることが不可欠である。
- 性加害が密室で行われており客観的証拠が残りにくい性質のものである上、加害者のジャニー氏が亡くなっていることを考えると、被害者の側に性加害の事実認定について法律上の厳格な証明を求めるべきではない。
- 被害者の真の救済を図るために、時効が成立している者についても救済措置の対象とすべきである。
- ジャニー氏の性加害が明らかになった現段階においても、ジャニーズ事務所の社員の中にはジャニー氏の性加害はなかったと述べる者がいる。
- ジャニーズ事務所が解体的な出直しをするため、経営トップたる代表取締役社長を交代する必要があると言わざるを得ず、ジュリー氏は代表取締役社長を辞任すべきと考える。
個人的に疑問を持った点
報告書を読み、内容について個人的に疑問に思った点を以下に挙げる。
白波瀬氏の認識について
報告書では白波瀬氏が現在は「ジャニー氏の性加害を認めている」としているが、
- ジャニー氏が「ホモ」だという認識が広まっていたことは知っていた
- ジャニー氏の性加害を申告した人の存在から真実だろうと思うに至った
などの供述から「ジャニー氏の性加害を認めている」と結論付けていることに違和感を覚えた。
ジャニー氏に関する噂が本当かどうかは分からないし、”事実だろうと思う”というのは”事実であることを認める”とは意味合いが違う。
被害者の供述について
報告書では被害者の供述をもとに性加害は「紛れもない事実である」とし、加害内容や事務所の対応などについても被害者の証言内容を事実としている。
しかし、裏付け調査や証拠もなしに、被害者の言ったことが本当に事実だと認定できるのか?
合わせて、「光GENJIへ」などの暴露本や週刊文春に記載された内容、これらについて事務所関係者にヒアリングした結果などが書かれているが、これに関しても暴露本や週刊誌の内容が事実かどうかの確認をしていない。
暴露本や週刊誌をソースとして論じるかのような書き方に疑問を持った。
ジャニー氏の性嗜好について
性加害の根本原因を「ジャニー氏の性嗜好異常」としているが、会ったことがないであろうジャニー氏に対してそう断言するのは問題があるのではないか。
メリー氏の認識について
報告書ではメリー氏が性加害疑惑に関して対策を取らず、「放置と隠蔽」したことが「被害の拡大を招いた最大の要因」としている。
しかしメリー氏がジャニー氏の性加害を認識していたと考えられる理由として挙げられているものは、「聞いたと考えられる」「関係者から聞いた者がいる」「~という話がある」など事実かどうか曖昧なものが多い。
すでに亡くなっているメリー氏の認識については、より慎重な調査が必要だったのではないか。
再発防止特別チームのメンバー
- 林 眞琴(弁護士)
- 飛鳥井 望(精神科医)
- 齋藤 梓(臨床心理士)
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業の弁護士6名(調査補助者)
林眞琴
元検事総長の弁護士で、再発防止特別チームの座長。
林氏はインタビューで、「調査では、ジャニー喜多川氏がいつ、どこで、誰に対してどのような性加害をしたのかという詳細な事実認定はしていない。」「詳細な証拠を集めて刑事責任を緻密に立証していく検事の手法は、事案の全体像を明らかにする上でむしろ適切ではないと考えました」と発言。
また、平本淳也氏は林氏から「証憑も証拠もいらないだろう。時効?いらないだろう」という言葉があったと述べている。
林氏と「ほうぼく(抱樸)」
林氏は「希望のまちプロジェクト」の”応援団”になっている。
「希望のまちプロジェクト」は福岡県北九州市に複合型社会福祉施設を建設し、そこを拠点に”まち”を拡げていくというプロジェクトで、「NPO法人 ほうぼく-抱樸」が中心となって整備している。
この「ほうぼく」の代表である奥田知志氏は、以前「Colabo」の理事を務めていた。
飛鳥井望
医学博士、精神科専門医・指導医。日本トラウマティック・ストレス学会の初代会長で名誉会員。
面識のないジャニー氏を性嗜好異常と診断した。
齋藤梓
臨床心理士、公認心理師、心理学博士。日本トラウマティック・ストレス学会の理事。
「わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点」という書籍では、北原みのり氏や仁藤夢乃氏らとともに執筆者として名を連ねている。また、日本共産党中央委員会から「被害者の視点からとらえた性暴力(フラワーデモ 3年目の春 : #MeToo #With you)」という記事を出版している。
「PENLIGHT」が齋藤氏の記事を紹介したことがある。
有料記事がプレゼントされました! 11月29日 20:58まで全文お読みいただけます。
信頼する相手からの性被害 子の訴え受け流さないため親にできること:朝日新聞デジタルhttps://t.co/X16qyrbYtZ— PENLIGHT(ペンライト)旧ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会 (@Penlight0412) November 28, 2023
飛鳥井氏・齋藤氏と日本トラウマティック・ストレス学会
先述したように、飛鳥井氏・齋藤氏はともに日本トラウマティック・ストレス学会と関わりがある。
日本トラウマティック・ストレス学会は、再発防止特別チームの報告を受け声明を発表。広範な性加害の実態と関係機関の不適切な対応を改めて指摘し、「このような性暴力行為は断じて容認できません」と強く非難している。
性被害によるトラウマや、インターネットによる被害者・支援者への誹謗中傷などにも触れた。
PENLIGHTはこの声明を「歓迎」するとポストしている。
日本トラウマティック・ストレス学会会長の声明を歓迎します。
この声明では、匿名のインターネット・メディアにおける被害者への誹謗中傷に懸念が表明され、被害者だけでなく支援者にも二次被害が波及しうると述べられています。https://t.co/biW5c2TaKa— PENLIGHT(ペンライト)旧ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会 (@Penlight0412) September 5, 2023
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